声が飛ぶ

ツイッチ配信者。プレイしたゲームの感想を主に書いていきます。

『Mutazione』 今年やってよかったゲーム。

 Mutazioneと呼ばれる島でコミュニティの人たちの話を聞きながら寄り添い植物を育てるアドベンチャーゲーム

 主人公のカイは祖父ノンノの住む島に行く。島の人たちは隕石の落下と共に奇妙なミュータントになってしまっている。人間らしい見た目をしているのは主人公や祖父のような他所から来た人だけだ。

 島の人たちは彼女を暖かく迎え入れる。

 カイは父親を事故で亡くしその過去が重くのしかかっている。

 町の人たちも様々な悩みを持って暮らしている。

 祖父は病気で臥せっており一日の大半をベットの上で過ごしている。彼は以前シャーマンとして島の人たちを精神的支えになっていた。

 カイは祖父に教えられながらシャーマンの代わりを任される。

 島のあちこちにある庭園で植物を育てるように祖父に言われ何もわからぬまま始めるがそこで島の人たちが打ち明け話をしてくれる。

 島での植物の役割は重要だ。自分の内側にある気持ちを庭園に咲く花に託し心の平衝を保つ助けになっている。植物を育てる際に音楽を聞かせてあげるのだが心地よいメロディで草花を眺めながら聞いていると気持ちが落ち着いてくる。

 カイは彼らの悩みに耳を傾ける。時には自分の感じたことを言うが、皆の言葉をしっかりと受け止めて寄り添う。そうすることで過去から一歩踏み出す勇気を与えているのだろう。つらい過去でふさぎ込んでしまいたいときに、自分のそばには支えてくれる人たちがいる。そう思うと未来に目を向けることができる。

 町の人たちの悩みは身近に起こりえる問題だ。

 ささやかなものから一歩間違えればすべてが壊れてしまうようなものまで多種多様だ。だから島の人たちを癒す存在が必要だった。祖父の代わりにカイはそれを成し遂げる。種をまき、口ずさみ、みなに寄り添う。そうして過去と向き合う土壌が次第に出来上がる。癒していたはずの自分も癒し、カイは元居た都会の生活に帰っていく。

 物語はそれで終わってしまうのだけれど、カイと彼らの思い出は決して色あせることなく残り続ける。

 嬉しいことにアップデートが来て、カイは彼らと手紙のやり取りをしているらしくその一部を読めるようになった。彼らの日常は穏やかでだが決して退屈なことなど感じさせない暮らしぶりをしているようだ。

 ぼくらは過去に根を張り育っていく。そこに土がないかのように育とうとすれば根はおかしな方へと向かっていくだろう。耐えがたい環境をないものとしてしまうのは今は楽だろう。だがゆっくりでいい、包み込むようにその土地を受入れよう。そうすればきっと今までより大きく枝葉を伸ばしきれいな花を咲かすだろう。

 『Mutazione』は植物のように育つ人の心を描いた素敵な物語だ。

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